Dale Velzy surfboards, CA

| HOME | About wood | History |

更新日 2017-05-10 | 作成日 2007-10-01

サーフボードの素材は"軽量化と防水"をテーマに進化してきました。
言い換えると、"乗り易さと耐久性"の追求の歴史です。
その中で、ウッドはどのように進化して来たのでしょうか?


wood blanksウッド・サーフボードは、大きく3種類あります。

  • 大木から削りだした"Solid"ボード。
  • 一度サーフボードの形に削った木材を板状にスライスして、          中をくり貫いた後に、元の形に貼り直した"Chamber"ボード。
  • 骨組みに薄い外板を貼り合わせ形にする"Hollw"ボード。

このような木製サーフボードの軽量化の技術は、船、ボート、カヌー、カヤック等の
”木材を使った、水の上を滑る乗り物”の進化と共にあります。

”西暦400年頃には、古代ポリネシア民族が、漁の帰りにボートを用いて波に乗る術を知り、
そこから木製の板に乗るようになった。”  
”西暦1700年代、キャプテンクックが船でハワイに着いた時、
夢中で波に乗っている地元民がいた。” など、
既にサーフィン史の文中、絵には、サーフボード以外の木製の乗り物が出てきます。  
創世記のシェィパー達はそれらの技術を取り入れて、より軽い乗り味を追求していきました。

丸太をくり貫いて形作る"くり舟"を、中空になるように貼り合わせることによって、
"Chamber"サーフボードになり、 "くり舟"の外壁に木の板を継ぎ足し、補強の骨組みを付けた
"ボート"や"カヌー"等に、上から蓋をすることによって、"Hollow"サーフボードにと、
それぞれ進化していきました。



Clark Foarm
1950年代に、Bob・Simmons(ボブ・シモンズ)と
Hobie・Alter(ホビー・アルター)、そして仲間数名で、
発泡させたPolystyrene(ポリスチレン)を心材にして
エポキシFRPで防水・補強する製作技術を発表しました。




その頃のウッド・サーフボードは、軽量なバルサの木を使い、
ポリエステルFRPでコーティングする方法が主流でしたが、
それには問題点がありました。

  • アメリカ本土で使えるバルサが少なくなり、

    安定供給が難しい状況になってきた事。

  • バルサ材に限らず、木材の水分や"やに"がポリエステル樹脂との相性が悪く、

    剥離しやすい事。

  • 水がボード内部に入ると、すぐにバルサ材が腐り易い事。

その後、研究を重ね、発泡ポリウレタンをサーフボードの心材とし、
ポリエステルFRPで防水・補強する方法に辿り着きました。  
軽くて、シェィプしやすく、安定供給、大量生産できる。
サーフィン史の中で、革命的な出来事でした。

それ以降、ウッド・サーフボードはほぼ絶滅し、表舞台に出る事はなくなりました。

一方、木製の船やボート達はと言うと、同じように科学の波に押されて、
安くて生産性の高いポリエステルFRPそのもので形作ったり、
鉄などの工業製品になりましたが、細々と進化・発展していきました。





2005年12月5日に、サーフィン界に事件が起こりました。 フォームブランクスの最大手
”クラークフォーム社”が突然事業を止めてしまったのです。

様々な廃業理由の一説に、発泡させる際に使う化学薬品"TDI系イソシアネート"の
毒性による環境・人体への影響がありました。

これをきっかけに、"軽量化と防水"がテーマだった進化に"環境対応"へのバランスが
要求されるようになり、世界中から将来へのサーフボード素材開発が始まりました。
開発は大きく2つの方向に進み、より科学的な解決と、自然素材を使用する道です。

前者は、毒性の少ない"MDI系イソシアネート"に切り替えたり、
その"MDI系イソシアネート"に、植物由来の原料を混ぜて発泡させる植物系ブランクスや、
リサイクル可能なEPSフォームを使ったボード、中空のカーボンボードなどがあります。

後者は、木製のボート、カヌー、カヤックなどの伝統的な木組み技術と、
進化した接着剤や防水用樹脂によって、木材を使ったサーフボードが注目され始めました。
また、アライヤ等FRPを使わない木製の道具達も見直され始めています。


今後は、環境に配慮した様々なサーフボードが出てくる中で、
ウッド・サーフボードは選択枝の一つとして、進化し続けるでしょう。



shop site

木製サーフボード・ブランクス
アライア・ブランクス
ハンドプレーン・ブランクス
ウッドフィン・ブランクス
テールブロック他、製作・卸
製作用品販売



 (ボブ・シモンズ) 
 近代サーフィンの発展に
 最も影響を与えた一人。

 多方面に才能を発揮し、
 特にボードデザイン理論では、
 1940年代後半に、
 Duel Finsコンセプト
 (24インチ幅のテール両側に2つの
 フィンを付ける)を発表しました。

 後にDuel Finsコンセプトは、
 2つのテールを持つ
 ツインピンテールになり、
 スティーブ・リズ、
 スキップ・フライ達が進化させて、
 現在のサンディエゴ・スタイル・
 フィッシュボードの、
 基本理念になっています。



 (クラーク・フォーム社)
 Hobie surfboardsの工場で、
 グラッシング担当だった
 Gordon Clark
 (ゴードン・クラーク)が、
 ホビー・アルターと共に
 ポリウレタンの発泡技術を研究し、
 1958年にサーフボードに最適な
 フォームブランクスを開発しました。

 その後、ゴードン・クラークは
 独立して、"Clark Form"社を設立。
 均一で細かい発泡ブランクス、
 欲しいサイズをすぐに作ってくれる
 サービスの良さから、
 常に業界トップブランドとして、
 発展していました。



 (イソシアネート)
 NCO基を持つ有機化合物で、
 サーフボードブランクスの
 発泡剤以外に、自動車部品、
 接着剤、人工皮革、断熱材
 等のポリウレタン製品に
 広く使われています。

 建材や家具などの接着剤
 としても使われているため、
 シックハウス症候群の原因物質の
 一つとして知られています。
 また、ポリウレタン、プラスチック、
 接着剤等の製造に関わる人の、
 職業性アレルギーの原因物質
 でもあります。
 皮膚や粘膜に触れると、
 炎症を起こしたり、過敏性肺炎、
 アレルギー性喘息等
 を起こすとされています。